1.巨大化するパチンコビジネス
日本全国のあちらこちらで、広大な敷地に十分な駐車場スペースを確保し、新規開店の為のホール建設が着々と進む。最近は、パチンコ・スロットル総台数が500台はもとより800台、1000台、1500台といった大型店の新規オープンも珍しくなくなった。複合施設と称して、映画館、飲食モール、サウナ、デパート、ボウリング、カラオケetc.と取り揃え、例えお客様が大勝しても、グループ施設内で散財していただこうとの戦略でもある。最初はパチンコに興味がないお客様も複合施設につられ、ほんの少しのつもりが、コアなパチンコファンになることは十分に考えられる。相乗効果を意図した大きな資本がなければ成立させられない豪快な商法である。そうした複合的施設のプロジェクトの中にあっても、パチンコ・パチスロ部門は、施設の基幹事業であることは間違いない。つまりパチンコ部門の成否がひいては施設全体の命運を決定づけることになる。こうした事業は、初期投資金額として、20億、30億以上ともなるビッグビジネスである。
2.勝負の瞬間
「新海物語」シリーズを中心とする各メーカーの人気機種を取り揃え、スタッフ教育として、お辞儀のマナー練習等も数え切れないぐらい行う。肝心の風営法許可申請も1年以上前から、獲得に向け準備しているはずだ。後は、当局の最終審査を待つだけ。パチンコ台の調整も試し打ちを何度となく繰り返し、分間スタート回転数をS6.5程度以上には揃えてあり、上手くたくさん出てくれよと調整者は神様にお祈りしている。スロットの設定をALL6にするかどうか店長さんが事務所でまだ悶々としているかも知れない。3年前までは18時にグランドオープンを仕掛けるパターンがまだ多かったものだが、今は12時やら平常10時にオープンするパターンが旬になってきた。外には長蛇のパチンコファンが今か今かとイライラしながら、攻略雑誌を眺めつつ、時計を気にしながら待っていることであろう。北海道から九州まで、これまでそんなオープン前のホールがまさに産声を上げようとしている場面にどのぐらい立ち会ったことだろう。釘師としても胃が痛くなり、プレッシャーで押し潰されそうになる時刻である。パチンコビジネスの醍醐味はまさにここにある。オープンスタート開始の音楽が流れた瞬間にそのホールは業界16,000分の1の生命体として誕生するのである。
3.勝負は3日
莫大は投資を行い、徹底した準備作業に労力を費やされたホールの明暗が実はたった3日間で分かれてしまうことを多くの経営者が気付き始めている。リニューアルで2ヶ月、新規オープンなら6ヶ月程度は、粗利率10%ぐらいでも、お客様の支持を受け、安定した80%程度の稼動が保てていた時代があった。そんなパチンコ商売の古き良き時代は、平成10年ぐらいに終焉した。現在進行形下の状況では、全国的にお客様はそのホールに根付くかどうかの見切りをたった3日間で済ませてしまう恐ろしい状況となっている。開店時の私自身のホールイメージで「満ち潮」と「引き潮」を全体的なイメージとして追いかけている。オープン以後、3日間のどこかで予定外のアクシデントが起こる、お客様の満足感を達成出来ないことなど「ズレ」が生ずれば、4日目にはさーっと潮が引くように、お客様は引き上げてしまう。引き潮は新たに産声を上げたばかりのホールの生命体としての死を意味する。準備に数年と数十億の投資の結果と命運がたったの3日間で判別してしまうのだ。なんとも刹那的で博打的要素の強い状況となっているのが最先端の状況なのである。そう、誰もが口に出さないので私が真相を述べたい。まず博打場の提供者、主催者であるオーナー様自身が、商売の前哨戦であるオープン数日間において、まず過酷な博打をさせられ、その器量を試されてしまうのである。このコラムをお読みの方で、「何も3日間で命運が決まるなんて、ちょっと大袈裟じゃないの。」と異議を唱えるオーナー、店長様がいらっしゃるかも知れない。しかし、はっきりと述べさせて頂くが、それは認識不足ですよと。また一度でもこの数年間、地区一番稼動店作りのプロジェクトを立ち上げた方なら、私の話に引き続き耳を傾けて頂けることであろう。勝負の速さ、怖さを体感されているからである。この先何度でも同じことを繰り返し強調していくが、もはや日本全国どのエリアにおいても、地区1番稼動の盟主の座を死守しなければ、このビジネスを続ける旨味、意味がないと共にサバイバルすら出来ない。そんな厳しい時代となっているのである。
4.戦略的釘師の資質
ハンマーを握り、命釘を板ゲージで開けたり、締めたりすることなら、小学生でも一週間もあれば、概ね出来るであろう。だから、釘調整の叩くということ自体に意味があるわけでも、難しい訳でもない。しかしながら、金銭のやり取りの場を提供する、その空間として生命体を手なづける、状況を深く観察し眺め正確にホールとお客様とのバランス、相性関係を読み切るとなると、これは誰にも出来ることではない。訓練とホールと向き合う上での発想の転換が必要となってくると「ぱちんこ道」では主張するのものである。
5.博打場の俯瞰
特に新規でもリニューアルオープンでも、担当釘師は、オーナー様と二人三脚となり、まず「場を読む」ということに集中し、ホールマシーンの演出指揮者乃至司令塔のごとき存在として、スタッフを動かし、機械の状態を把握、意のままに操らなければならない。「収支計画での予定では、開店3日目のパチンコ赤字額は、500万円であるけれど、2日目の満台になるまでの時間、立ち見客の数、景品交換所前の両替しているのお客様の表情により、このままでは3日目に引き潮が来てしまうな」と予感したとする。こんなとき、あなたが釘調整責任者なら、どうするであろうか。私ならそこで体が反射神経的に反応し、オーナーに直訴、1000万円の赤字予算に緊急修正し、狙い通り以上に玉を出し、引き潮の流れを強引に変え勝ちに持ち込む。以後満ち潮、引き潮の分岐点で決断し勝利したホールは、一気に好循環の連鎖の輪の中に入ることを業界経験の長いオーナーも、間違いなく感覚的に知っている。そんな場面での判断ミスにより、本来不要で莫大な機械代予算を後々再投資し、稼動安定まで、月日を掛けざるを得ない、自ら遠回りする要因を作っているホールがいかに多いことか。
「恐れからくる一歩の遅れ、それがもたらす致命的なLOSS」
~Dragon Ash –Let yourself go, Let myself go~より抜粋。
そんな時、脳裏にフワフワと浮かび、身を引き締めてくれるのがこの歌詞である。要は博打場の特性、波、うねり、性質、そしてお客様の心理を把握、読み切った上での判断、実行がなければ、せっかく誕生したホールを殺してしまうことになるということを繰り返し強調したい。
6.釘師と戦略立案
戦略的釘師は、前哨戦において、どんな方法を取ったとしても、絶対的に優位な位置をキープすることの重要性をイヤというほど、知り抜いている。また勝負どころで中途半端な出玉演出をしても、無駄な死に金となり、ホール立ち上げに対する莫大な投資を無意味にしてしまう怖さも十二分に熟知している。だから「押す・引くの場面」ではためらってはいけない。
多くの場に参戦し眺めながら試行錯誤して到達して見える風景は、「パチンコ商売に答えはない」というすごく当たり前でシンプルな真理であった。強いて言えば、「稼動が地区一番になっている時」、その状態を支えている方針こそが答えなのである。だからA地区で有効であったノウハウが、B地区で有効であるとは限らない。しかしながら、地区一番ホールのプロデュースという観点から、「確実にしてはいけないこと」というのは明らかに存在し、消去法でそれらをつぶしていけば、「答え」に近づいていくということだけはっきりしているのだ。戦略的釘師とはこうした深遠なる「場を読み切る」という事象概念に果敢に挑み、常に念頭に置き、戦術を考えていかなければならない。しんどいがやりがいのある企業の番頭役でなければならないのである。目標達成までのイメージが、自信から確信に変化し、執念にまで昇華した気力ある釘師を抱えている企業は安泰である。そんな釘師とオーナーとの出会いは、まさに運以外の何ものでもないであろう。私は戦略的釘師に内在する意識の有り様をこの場で表現、吐露することにより、店舗関係者の場面毎の判断の手助けをしていくものである。
7.稼動はオーナー器量の鏡写し
稼動不振店舗からのホール診断要請を受けて、店舗に赴く。まず私が眺めるのはオーナー自身の問題意識だ。多くの場合、戦いに疲れ果て、戦意喪失し、パチンコ商売に最も必要な「攻撃的精神」を既になくしている。場に対して「腰が引けている」といっても良い。今だに店を開けば、どっとお客様がなだれ込んで来ていた頃の懐古話をとうとうとされ、この業界の変化のスピードの速さについていけない、浦島太郎的な代表者が実際のところ多い。私はオーナーの意識改革が出来るのかどうかという視点で社長自体の話を注意して聞き入る。稼動不振へのプロセスは、一様ではないけれど、多くは外的要因として新規大型店の出店攻勢により、商圏マーケットが劇的に変化したときがターニングポイントとなっている。その際、右往左往し入替機種、換金レート、営業方針につき明確な根拠、確信がないまま営業を続け、ずるずると後退していくというのが凋落までの一般的な道筋である。新規店の企業体力のあるところと似たようなイベント戦略をしたところで、勝ち目はない。相手の土俵で勝負するという時点で既に終わっている。自らの土俵に敵を呼び込むということを意図的にしなければならないというのにそこまでの戦略・戦術が立てられないという訳である。残念ながら、社長自身が攻撃的精神を失くされ、戦う意識自体も死んでいることが多いのが現状である。最近の特徴として、経営を引き継いだ若い2代目経営者に多い傾向でもある。ともかくホールに閑古鳥が鳴くと共にオーナー自身の意識が死んでいれば、もはや手遅れ、戦略的釘師の出番も何もない。こちらも、必死に社長の意識改革・蘇生を試みる。再度戦闘態勢を取るべく気力を充実させ、「宣戦布告」まで引っ張っていくのは、大変だけれどやりがいのある仕事ではあった。実際にはまず外敵と戦う前に内的なハードルをいくつも乗り越えなければならないのというのが正直なところ。
泥臭いグレイゾーンのお話をすれば、まず稼動不振店の100%に近いホールが、裏基盤取り付けにより、内部者により、崩壊させられているのも日本全国共通の典型パターンである。私がオーナーの資質、器量を問題にするのは、こうした大きな金銭を扱う場におけるスタッフの管理監督、教育がこの商売としては、非常に重要であるからである。また企業として戦う体力があり、玉を出せないホールと既に資金体力的限界を超えてしまい玉が出せないホールの2パターンがある。再度仕掛け直す資金のない企業は残念ながらアウト。「ぱちんこ道」は、ゲリラ的な奇襲作戦や非合法なノウハウを提案するつもりはない。あくまでも正々堂々とパチンコビジネスの王道ともいうべき道を追求しながら、最強店を構築していこうとのコンセプトである。何でもあり的な発想で、暴走するホールの存在があるのは事実であるが、なんとも嘆かわしい。短期間に稼動が上昇するホールは、逆に短期間に崩壊する目も合わせて持っていることに気がつかないのである。商売は終わりなきマラソンのようなものである。一時期稼働・売上状況が良くても、パチンコ商売寿命からすれば取るに足らず、全く意味がないということに気付くべきある。
「ぱちんこ道」では、非合法なリスクを犯さなくても、合法的に、機械ではなく、人間とハンマーだけで、地区1番稼動店までのプロデュース技術を公開していく。徐々に私自身の本当に伝えたいことのPassionともいうべき経験値のギアシフトをフル回転まで、上げていく予定でもある。