12箱目店長釘師

店長釘師の育成
1.0.1mmの世界
新海の再認定作業に伴い、各ホールの立ち入り検査をサポートし、その作業も一段落した。通常スタート外ベースを1乃至2程度に抑える為工夫しながら、おまけ部分を調整してあるが、その箇所も検査を無事通過するまでは、緩めに設定しておかなければならない。
高価交換営業では特に微細に管理している箇所であるので、検査などなければいいのにと思っているのが現場スタッフの本音だろう。
問題は、検査終了後に元の状態に確実迅速に戻すということだ。つまり、新海で言えば、おまけ入賞口4箇所を玉ゲージ11.03で通し、11.06で通らなくすれば良い。

2.基本調整能力
新海の各ホールに占める台数比率は、いうもまでもなくダントツで1番であるから、全台を的確に元の状態に戻すのは、店長さんにとってしんどい作業であるのに違いない。0.2~0.3の違いを体が反射神経的に認識するかどうかは、その人のセンスに関わってくると言えるが、やはり経験だ。どれだけ多くの時間を費やしマシンに自らのPassionを投資したかにより、そうした微細な感性が研ぎ澄まされていくかどうかは決まっていく。

3.心の揺れ
この商売、現場に出ていれば、日々様々な出来事に遭遇する。信頼していたスタッフの理由不明による突然の退職、ゴト師の出現、お客様のクレーム、スロットで設定を1にしておいたのに、いつのまにか設定6にされていた時など、回りを取り囲む全てに対して、疑心暗鬼にならざるを得ない。自分を抑えようとしても、どうしても平常心でいられなくなる。
0.1mmの感覚が、急速に損なわれるのは、そんな時であろう。心が揺れてしまえば、それが釘調整にダイレクトに影響する。いつもは、命釘がピタリと水平に左右段違いにならずに決まるものが、微妙にズレてしまい、本人も気が付かない状態。自分では判別出来なくても、プロが見れば一目瞭然。そんな店長の心の動揺がお客様に見抜かれて良いわけがない。

4.自己管理
いつもホールに入る瞬間、プライベートな事を始め、例えアクシデントが起きていても、そうしたマイナス要因は、頭の中から追い出すようにしている。
仮にそうしたことが不可能なほど、感情の揺れが大きいときは、その夜はハンマーを握らず、平常心を取り戻した後、朝の営業前に調整をさせてもらうようにしている。それも出来ない時は、釘を締める予定であっても、開けてしまう。締め過ぎるリスクを回避しなければと体が自然に反応するからだ。

5.開け型or締め型
多くの店長さんに接する機会に恵まれたが、その釘に対する姿勢を見ると面白いもので、開け型か締め型に分類することが出来る。両方とも同じぐらいのバランスの人というのはどういいわけかいない。開けるのが好きな人と締めるのが得意な人という分類で良いとも言える。不思議なのは、開け型の多くが血液型でいうとO型であったということである。気質的におおざっぱで、無心になれるのが良いのであろうか。言葉を悪くすれば、瞬時にバカになれる術を知っているとも言えるか。

6.ホール財産
そんな命釘を開けるのが好きな店長釘師を抱えるオーナーは、大きな財産を持っていると認識された方が良い。比率から言えば、8割程度の若い店長さんが大胆に開けられない感性を既に背負いこんでしまっているからだ。
勝負所で、数百万の赤字還元をしなければならない状況下で、ハンマーの動きが鈍ってしまう若き店長釘師。
「もし、たくさん玉が出過ぎてしまったら、どうしよう。社長に怒られるだろうな…..その後に稼働が上がらなかったら、赤字分の責任追及をされるだろうな」と、頭の中がこのようなネガティブな思考回路になってしまうレベルでは、残念ながら玉を出すどころでない。
「よし勝負だ!明日は、どかんと社長がびっくり顔面蒼白になるぐらい玉を出してやれ。お客さんも腰を抜かすぐらい玉箱を積み上げてやれ。帰りたくたって帰れなくしてみせるぞ!」
0型釘師は、ただ単純にそんな風に思考してしまうから、幸せなのかも知れない。

7.金銭感覚
多くの若い店長が一日にプライベートにおいて、数百万円単位の消費をするなどという経験は持ち合わせていない。理想を言えば、個人的に数百万円のやりとりをした経験のある人が、心のブレがなく多額の金銭をコントロール出来る。
パチンコ店における現金は戦争における実弾のごときである。またある局面では、鼻紙程度の感覚に感性をシフト出来なければ、お金をお金として認識してしまう。
福沢諭吉をホール事務所で大事に拝んでいるうちは思い切った出玉演出など、到底出来ないというわけだ。
これは、お金を粗末に認識するということでなく、閉店後100円の営業金銭がショートしたってホールの隅々まで、スタッフ総出で探し出すのは言うまでもない。
玉を出すべき時にまとめて出せる店長釘師は、中途半端な出玉演出が無意味なことやお金は寂しがり屋なのだから、まとめて使わないと意味がないということをぼんやりと認識されてはいる。
社長をはじめとする組織経営陣は、店長釘師を事ある毎に、萎縮させてはいけないと神経を使っているものだ。
月末に来て、粗利目標に足りない時など、新海が吹いて赤字になってしまうことがある。
そんな時こそ、店長釘師に
「パチンコ屋は、玉を出し過ぎて潰れたホールはないのだよ。でもね、締め過ぎて潰れたホールは、無数にあるのだから…」と、やさしく包み込んで欲しいところだ。