6箱目店長の憂鬱

釘戦略=経営戦略
1.店長釘師
全国各地のホールに赴き、グループチェーン店の店長会議に出席することも少なくない。
順繰りに各店舗の当月の営業成績、機種毎の分析、競合店の動向についての報告が終わると、翌月の営業収支計画による売上の予測と目標粗利の設定、購入機種と撤去台確認などが報告されていく。台売上稼動20,000円を切ってしまったホール店長は、ひたすら萎縮し、終始うつむいている。社長から、稼動低下の原因を追究されると、「隣のA店は、裏モノでモーニングを仕込んでいるので、朝の稼動が落ち込んでいます。こちらも新海の新鮮なイベントで、巻き返し、新海稼動は、地区一番を目指します!」などと答えるの精一杯の様子。(店長が被害妄想に陥るほど、実際の裏モノ設置店は多くない。)
オーナーが醒めた眼差しで問う、「新鮮なイベントって、具体的に何?」
店長は既に脇の下から、冷や汗が滴り落ちて止まらない。「・・・・・」。日本全国のあちらこちらで見受けられる店長会議の一コマである。
2.店長イヤイヤ症候群
日々店長職の激務の中、会社役員サイドからは、毎月ホールの長期、中期、短期的なスパンにおける営業テーマ、ビジョンを提示せよと厳しく追及される。そんな胃の痛くなるような店長の置かれた立場を知り抜いている副店長、主任、班長といった部下の間で、「店長になりたくない症候群」が蔓延し始めている。店長となって、ホール責任者となっても、仕事がとてつもなく増えるだけで、休日も夜は調整の為出勤しなければならなくなり、自分の時間が全く無くなるのがいやだというわけだ。最も嫌がるのは、パチンコ、スロットの調整設定管理をすることにより、稼動・粗利獲得の責任を負わされること。こうした一番神経を消耗する、稼動上昇を図りつつ、売上・粗利も増やすという、やりがいある困難な職務に積極的に取り組もうとしない若いホールスタッフが急増したのが、最近の特徴。店長が唯一ほっとする瞬間、会社役員、現場、家庭の板ばさみから解放され、ふっーと溜息をつける場所、そこは夢の楽園フィリピンクラブ。なぜか定番、癒しの空間というわけだ。そこは割数、売上、粗利、スタート、ベースそんなうっとうしい数値に日々追いかけ回され、うんざりとして疲労困憊した店長釘師を優しく包んでくれる南の島なのかもしれない。
(店長さん!!飲んだら、また明日から、戦闘開始ですよ!!)

3.経営者的視点と釘調整
いうまでもなく、パチンコビジネスは、ただ単にお客様を喜ばせればいいという慈善事業ではなく、利益追求とのバランスが重要になってくる。決済権限のある経営者が直接釘を叩くのが理想である。たくさん玉を出そうが、締めて回収し過ぎても、誰も文句は言わないだろう。手形の決済日から、全ての営業経費の支払い金額、支払い日まで把握している人間が利益バランスを取るの一番だ。パチンコビジネス創世記の頃は、当たり前のように社長自身が、ハンマーを握って釘を調整していたものだ。しかしながら、店舗が増加し、機械台数が増台すると、いつまでもそういう訳にもいかなかった。社長自身の年齢、体力的な衰えも当然にある。オーナーは、密かに若い店長釘師に期待する。「スタッフをまとめながら、経営者的視点に立って、釘を叩いてくれよ。全体像を把握した上で、出したり取ったりの舵取りを上手くやってくれよ」と。
4.店長=経営者
オーナーの期待を背負った店長の頭の中はいつでもホール維持経費が、行ったり来たりしている。ざっと項目的に、人件費、土地代、機械代、広告台、修繕費、電気代、景品購入費などが発生、本音としては、トータル粗利額を何とか下げたいと考え、いつだって利益率と稼動のはざまで、身悶え、もがき苦しんでいる。毎月どんな規模のホールでも、数千万円は待ったなしで経費確保をしなければならない。正直逃げ出したいと思うこともあるだろう。調整が思うように行かず、割数が噴いてしまった時など、ホールコンを覗く度に心臓が締め付けられるように痛くなるに違いない。そんな時には、朝の開店を待ちわびるお客様の行列を思い出し、「もう少し頑張ってみるか。」と新たに気合を入れ直しているのかも知れない。

5.ホールステイタス
ホールの格付け実力は、常時どれだけ多くのお客様で賑わっているのかが全てである。いくら、一流ホテルフロント並みに接客マナーが優れており、ハード的に建物、内装が豪華であっても、稼動が弱ければホールとしての位置付けは、低いといわざるを得ない。

6.口説く秘訣!?
結局最も重要なことは、「一度来店されたお客様をホール内に少しでも長く滞留させるにはどうしたら良いのか」というポイントに尽きる。これは、稼動・売上を上昇させたいのであれば、いかにお客様にお金を使わせないかという次元の問題といつだって表裏一体であるから、やっかいだ。イベントやら、マイクで煽れば煽るほど、お客様の心は、離れていき、醒めた関係になる。
「口説く最大の秘訣は、口説かないこと…」
言葉として書き記せば、一行にも満たない黄金の真理を体得するのに、20年の歳月と、有り金全てが、夜のブラックホールへと吸い込まれた。この格言をトロピカルな雰囲気で酔いたいブロークンハート気味の店長様に心より伝えたいと願う。、「確変状態」が延々と続き、誰にも経験があることと思うがもうやめて帰りたいのに、確変が続いてしまい時計を気にしながら帰れないあの状態に似ている。地区一番の稼働となり、稼働が安定すれば、店長を始めとするスタッフの諸条件も改善され、ますますホールを良くしようと、普段のトイレ掃除にしたって思わず力が入る。自然と意識改革に拍車が掛かり、自分の勤務するホールの店内が汚れているのは恥ずかしいという感覚が芽生えてくるから不思議だ。スタッフが精神的に満たされ、健康的にも安定していれば、そうした雰囲気がお客様に悪く伝わる訳がない。普段あちらこちらのホールで、「作りもののイミテーション・スマイル」に辟易したお客様にも、気分良く奉仕の気持ちが伝わるに違いない。