Xích lô

ハノイ国際空港に到着すると、これが本当に首都の表玄関である国際空港なのかと、目を疑った。空港施設は、貧相で、古めかしく、またのんびりとした空気が全体に漂っていた。私が、ベトナムに行ったのは、日本のある芸能プロダクションからの依頼で、美人の宝庫といわれるベトナムから、アイドル候補生を探してほしいとの注文を受けていた為である。アイドルを育てるとなれば、若ければ若いほどいい。早速、中学、高校、大学を回り、日本での芸能活動に興味を持つ、候補者を探し始めた。黙って待っていても、そう簡単には、カワイコちゃんは現れない。街頭に繰り出し、道行くベトナム女性に片っ端から、声を駆け始めることにした。街中を颯爽と小型のバイクで駆け抜けるアオザイ衣装を着たベトナム女性たち・・・やはり何といっても純白のアオザイに身を包んだ自転車で行き帰りする女子高生の姿が何とも眩しい。一週間ほど、カワイコちゃんの資料作りに専念したが、夜のハノイの風俗事情は、どうなっているのか、例の悪い虫が、ふつふつと騒ぎ出した。方々から、情報を集めても、大都会ホーチミンと比べ、ハノイにおいては、せいぜいが、カラオケクラブで横にダンシングガールと呼ばれる、いわゆるホステスをはべらしながら、一緒に歌う遊びが、精一杯である。そのカラオケにしても、ロイヤル、VIP、Qween Beeといった安心出来る大きなカラオケクラブは、3軒しかハノイには存在しない。英語を話せる女の子が多いという噂のロイヤルにまずは、行ってみることにした。最初に横に、すわったのが、リサだった。リサは、昼間は日本企業で通訳を担当するOLだ。夜のバイトは、幼い兄弟の学資稼ぎの為に。稼ぎと言っても収入の全ては、客からのチップだけ。ケチンボな欧米人と比べて、羽振りのいいのは、単身赴任で寂しく、ハノイに赴任している日本人男性ということになるらしい。その日、閉店間際のチークタイムの時のこと。黒のイブニングドレスから、こぼれんばかりのリサの豊満な胸を押しつけられたとき、一気にフォーリング・ラブ状態に。
翌日は、夜7時のオープンと同時にロイヤルクラブに突入した。支配人にお願いして、料金を上乗せし、2階の特別個室に移動する。10畳ほどの広々とした部屋は、ゆっくりと愛を語り合うには、持ってこいの場所だ。リサが、ドアをしめようとして、後ろを振り向いた瞬間、思わず抱きしめた。甘い香水の匂いが、脳神経を麻痺させる。胸の中に手を入れようとすると、軽くツネって、
「誰か来たら、どうするの?」

って言う意味のベトナム語をしゃべったようだ。
さっと、くちびるを重ねると、「あんっ!」とうめきながらも、舌をからめさせてきた。五分ほどそのまま抱き合っていただろうか。「コン、コン」とウエイトレスが、ドアをノックする音と共に二人は一端離ればなれになった。リサは、いたずらっ子のようにペロッと舌を出して、ウインクした。
ー閉店のミッドナイト三時の時間ー
「ソフィテルの前で、待ってるから、必ず来てくれ」
「でも、あなたの部屋までは、いけないわ」
「Why?」
「ベトナムの法律できまっているの。独身の女は、結婚するまでは、男性の部屋を訪ねるのは、とても重い罪になるわ。きっとあなたも警察で大変なことに・・・」
「OK。でも、バーで少し、飲むぐらいなら、大丈夫だろ?」
こっくりとうなずき、私を見つめるリサにもう一度、くちずけして、店を出た。ゆったりと町中を走るベトナムのタクシー的な存在であるシクロに揺られながら、
・・・さて、今夜は、どんな展開になるのやらと淫らなことを考えた・・・
フランス統治時代の名残りのようなホテルソフィテルにもどり、リサを待つ。その間にハノイで世話になっている悪友に電話で今夜の段取りをしないと・・・
「今から行くから、朝まで部屋を貸して欲しい・・」
ハノイで困るのは、こうして彼女が出来ても、自分の泊まるホテルには、ホテルの従業員や公安警察の監視の目が厳しくて連れて帰れないことだ。社会主義の国は、こんなところが融通が聞かない。遠くから、バイクの音が聞こえる、ホンダカブにまたがり、勢いよく飛ばして、リサがやってきた。リサのお腹に、しっかりつかまり、ホアンキエム湖の周辺をぐるぐると回った。九月の夜風が、気持ちいい。湖のほとりのベンチで、もうガマンできないとばかりに、ねっとりとしたキスを交わす。すぐに、私自身が、熱く反応してしまい、リサの手をそっと男性自身の上に・・・
「アン・ニュイ・エム」と耳元で囁く。
ベトナムで真っ先に覚えた愛の呪文の言葉。
リサは、にっこりと微笑んだかと思うと、しっかりと手に力を入れて、直接私の下着の中の熱いモノをぐっと掴んでくれた。もう私自身の先端も濡れていて、天に向かってまっすぐに伸びていた。リサを楽にしてやろうと思い、ジーンズのチャックをゆっくりとおろして、うっすらとした茂みの中を慎重にまさぐった。
・・・熱いジュースが、したたり落ちていた。もう、こんなになって・・・
私は、もう友人の家に連れて行くまで、待てずに、その場で一つになろうと決めていた。
リサの顔を静かに、私のそれに近づけると、
ちょっと上目づかいに、私の目を見ながら、困惑した表情になっていた。
私が「頼むから・・」と目で合図すると、リサは、ゆっくりと口の中に含んでくれた。先端を舌でチロチロと舐めてくれたかと思うと、のどの奥底まで一気に包んでくれる。暖かくて柔らかな感触の中で、リサの頭だけが、ゆっくりと上下している。あたりには、誰もいない。静寂な夜・・・
私は、しゃがみ込んだリサをゆっくりと立たせると、後ろ向きにして、リサの手をしっかりとベンチの背もたれに掴ませた。リサのジーンズをヒザの所までずり下げると、少々挿入が難しかったが、溢れ出る泉のお陰で、スルッと侵入する事が出来た。声を出すのを躊躇しているのか、リサは指を噛みながら、苦悶の表情を見せている。私の振動に合わせるかのように、腰を軽く前後に揺すって応えてくれる・・・
私は、一つになりながらも、後ろから右腕を回しリサの突起を軽くつまんで撫であげると、初めて
「・・・・」
と、声にならない、かぼそい声をベトナム語で絞り出すのだった。まるで火山から溶岩が飛び出したかのような全てのマグマをリサの体内に送り込むと、うっとりとした目でリサが、目前に広がる湖を瞬きもせずに眺めていた。リサに夢中で気がつかなかったが、無数の鴨の百万の視線が、暗闇の中で、こちらを凝視しているかのようだった。